キャズム

キャズム

キャズム

今、米国の著名なITコンサルタント、ジェフリー・ムーア氏の「キャズム」という本を読んでいる。この本はハイテクマーケティングのバイブルとして、スタンフォード大学等でも扱われている。
ハイテク製品を買う顧客層として、
イノベータ(テクノロジーマニア、テッキー)→アーリーアダプター(ビジョナリー)→アーリーマジョリティ(実利主義者)→レイトマジョリティ(保守派)→ラガード(無関心層)
とあり(アーリーマジョリティ、レイトマジョリティがそれぞれ全体の1/3を占めるメインストリーム(主流)市場)、企業がハイテク製品を売っていく上で、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間には大きな溝(キャズム)(障壁といった方がいいのかもしれないが)があるといった内容である。
アーリーアダプターは、ビジョンをもって、ハイテク製品を購入することにより、ビジネスの変革を求めており、その変革が達成できる可能性があるのであれば、リスクを恐れない層である。また、アーリーマジョリティは当該製品を購入することによって、コストダウンが図れたり、生産性が向上できたりといった形で確実に利益を求める層である(失敗は許されないため、事例を何よりも重視する)。
このようにアーリーアダプターとアーリーマジョリティはそもそも、購買理由が違うために、ハイテク製品がアーリーアダプターまでは順調に売れても、アーリーマジョリティには全く売れずに結局ヒットしないということが起こる。このアーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にザックリと横たわっている溝がキャズムである。
ここで、アーリーマジョリティを攻略するためのテクニックがこの本では記載されている。要は、アーリーマジョリティの中のニッチなセグメントの中のターゲット・カスタマーを絞り込み、アーリーマジョリティに属するカスタマーの導入事例を作った上で、そのセグメント内を攻略し、このセグメントを起点として隣接セグメントにどんどん侵食していくといった手法である。
この手法は、戦争で敵陣に入り込む戦略からきているものであり、考え方はランチェスター戦略と似ているような気がした。
http://www2k.biglobe.ne.jp/~yano/LAN.html

キャズムSOAについて記載してあるBlogが以下(ジェフリー・ムーアの講演について記載されている)にあった。
http://blog.japan.cnet.com/umeda/archives/001730.html

SOA(Service oriented architecture)こそがエンタープライズ市場における「the next big thing」なのだ、というのがGeoffrey Mooreの論点である。」
と記載されているが、
SOAキャズムを果たして超えられるのか?という疑問が出てくる。
ジェフリー・ムーアの理論からいくと、SOAもまずはニッチ市場から攻めないと、マジョリティには受け入れられないということになるが、既存のベンダーは、ミドルウェアSOAの概念を入れて、思いっきりメインストリームに訴求しようとしているような状況である。このベンダーのアプローチではSOAキャズムを超えられないのではないかと思ってしまう。そういう意味では、SOAキャズムを超えられるのは既存ベンダーではない、ニッチ市場にSOAを適用した新規の破壊的イノベーターではないのかと思ってしまう。
以下の記載がまさしく当てはまるのだと思う。

「「現在のエンタープライズ市場の構造」は、それぞれのカテゴリーに強力なゴリラやチンパンジーがいて実に強固な構造をしているが、それを「internet-enabled client/server dependent on large monolithic structures」と呼び、その構造が最先端技術によって大きく変化し、新しいスタックが、一夜にしてではないが生まれるのだ、と説いている。そして新しく登場する破壊者は、新しくやってくるゆえの「architectural advantage」を活かしてニッチ市場を獲得し、新しく生まれるレイヤーでのゴリラを目指せ。「Innovator's Dilemma」をレバレッジせよ、というのは、ゴリラやチンパンジーが構造的にできないことをせよ、ということ。それが破壊者の戦略なのだ。」